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『マリコ、うまくいくよ』の感想

頑張って勉強し、希望をもって入った会社。新人時代は仕事を覚えるのに必死だったけれど、一通り仕事を覚えてからは、どこまで続くか分からない平坦な道を歩き続けている気がして、「これでいいのかな?」と不安になる瞬間があるかもしれません。

会社の同僚に本音を打ち明けることは、はばかられるでしょう。でも友達は充実した生活をしていて、なんとなく愚痴を言いたくない。そんな悩みとも言えない悩みを抱えている人に、そっと寄り添ってくれる『マリコ、うまくいくよ』を紹介します。

ここに描かれているのは、出世したいわけではなく、プライベートを楽しむために仕事をしている女性ならではの感覚です。「自分だけではない」という安心感を得られる本だと思います。


内容紹介

働くって、なんだろう。「今日も会議で意見が言えなかった」社会人2年目のマリコ。社会人12年目のマリコは「〈会社用の自分〉に、自分がのっとられそう」と感じ、会社員20年目のマリコは「後輩は増えるけど、年上の実感ってない」と思う。同じ職場を舞台にすれ違う20代、30代、40代の3人のマリコたち。大丈夫、きっとうまくいくよ。読めばじわりと勇気が湧いてくる、お仕事漫画登場。(カバーより)

著者紹介

益田ミリ
1969(昭和44)年大阪生れ。イラストレーター。漫画『すーちゃん』『沢村さん家のこんな毎日』『僕の姉ちゃん』『こはる日記』『スナック キズツキ』、エッセイ『永遠のおでかけ』『しあわせしりとり』『おとな小学生』、小説『アンナの土星』『五年前の忘れ物』など著書多数。(カバーより)

感想

20代のマリコと30代のマリコと40代のマリコ。それぞれの視点から見た「会社で働くこと」を描いているマンガです。全員同じ会社で働いていて、職場でのひとこまを切り取った短い話がリズムよく並べられています。

しかし、タッチはとても静か。とつとつと語る感じがリアルです。会社員の悲哀に共感すると同時に、「みんな同じなんだな」と安心したり、「こんな感じで過ごせば波風立たないのか」と気づかされたりするのではないでしょうか。

面白いのは、20代と40代は考えていることが同じで、30代はこじらせているところです。一周回って同じところに戻ってくるのでしょうか。人間は成長しないことがよく分かります。いとおしいですね。

そして、みんな他人のことをよく観察しています。他人の言動を気にし過ぎじゃない? と思うけど、会社で上手く立ち回るにはこれができないとダメなんだろうな。人を観察して上辺だけの会話でその場をやり過ごす。その姿を、読者はどのように感じるのでしょうか?

会社員の女性を応援する意図で描かれたと思うのですが、逆に現実をつきつけられて辞めたくなる人もいるかもしれないと思いました。

本の紹介には、「読めばじわりと勇気が湧いてくる。」と書かれています。このマンガを読んで勇気が湧くのが会社員であるならば、逆にこの空気が苦手な人は会社員に向いていないかもしれません。リトマス試験紙のようなマンガだと思います。

OLという働き方が分かる本

組織で働くというのは、そのほとんどが、人間関係の営みなのでしょう。純粋に作業に集中していればいいわけではありません。契約書に書かれているのは作業内容と時間です。しかし、人間関係にこそ、会社組織で働く本質がある気がします。その現実を静かに受け入れられる人が、表面的には穏やかに会社員として暮らせるのでしょう。

働き方には向き不向きがあります。会社員に向いていなくても、自営業で問題なく働けるかもしれません。もちろん自営業には自営業の苦労があり、その苦労を嫌だと感じる人もいるでしょう。本は、いろいろな働き方の感覚を教えてくれます。いろんなタイプの本を読み、自分に合う働き方を見つけてみてはいかがでしょうか? 『マリコ、うまくいくよ』は、いわゆる「OL」という生き方の肌感覚を疑似体験できる本でした。