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『吾輩も猫である』

『吾輩も猫である』
新潮文庫

・赤川次郎——いつか、猫になった日
・新井素子——妾は、猫で御座います
・石田衣良——ココアとスミレ
・荻原浩——吾輩は猫であるけれど
・恩田陸——憶隠
・原田マハ——飛梅
・村山由佳——猫の神さま
・彼女との、最初の一年——山内マリコ

感想

夏目漱石没後100年および生誕150年を記念して出版された本。『吾輩は猫である』の名前がないお猫様へのリスペクトを込めて、8名の作家が「猫」というテーマで書いた短編集です。カバーでは、「究極の猫アンソロジー」と紹介されています。

『吾輩は猫である』のオマージュ作品だらけと思いきや、「絶対ふざけてるやろ?笑」と思う作品もあり、1冊でかなり楽しめます。ページ数は約200ページですが、作品が変わるたびに、白紙ページと作家紹介ページがはさまっているため、実質180ページくらいの薄い文庫本です。一つひとつが軽快なタッチで書かれているので、サクサク読めます。

荻原浩の作品は、4コマ漫画です。中間地点で登場するため、脳をリセットできるかもしれません。私は左脳読み派(論理で文章を読む)ですが、漫画は自然と右脳優位(イメージで理解する)になるので、脳のストレッチになります。ただ個人的には、漫画表現をうまく理解できず蛇足と感じました。とはいえ価格が520円と安いので、7つの短編集と思っても満足感があります。

個人的に一番好きだったのは、石田衣良の『ココアとスミレ』。他の作品がすべて猫の一人称で語られているのに対して、この作品は三人称で書かれています。中心となる視点人物ならぬ視点猫はいるものの、複数の猫に視点を担当させているところがとても丁寧だと感じました。短編なのに世界観というか設定がしっかり作りこまれていて、エピソードも感動的。ウルっとしました。

複数の作家の文章が詰まった本は、自分好みの文章を見つけられるところもいいですね。好みの作家に偏りがちなので、たまにはアンソロジーでこれまで読まなかった作家さんの文章に触れると、世界も広がります。

この本を読んで一番強く感じたことは、たいていの本好きは、「吾輩×猫」が大好きだな…ということでした。