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エッセイとコラムの違い

本が好きな人には「エッセイストになりたい」という人が多い印象があります。エッセイストになりたい! と思ったときに、気になるのは「エッセイってそもそもなんぞや?」ということではないでしょうか? また、同時に「コラム」とは何が違うのだろう? という疑問も生じることでしょう。

実は、コラムニストになるのは難しいですが、エッセイストになるのは簡単です。というより、すでにあなたも私も、エッセイストかもしれません。

ここでは、エッセイとコラムの違いを解説します。

エッセイとコラム4つの違い

エッセイとコラムの定義は、明確に決まっているわけではありません。しかし、一般的にエッセイと呼ばれる文章とコラムと呼ばれる文章には、違いがあります。その違いは、主に「語源」「内容」「掲載場所」「著作権」の4つです。それぞれの違いを紹介します。自分が書きたいのはエッセイなのか? はたまたコラムなのか? ぜひ参考にしてください。

語源の違い

エッセイの語源は、フランス語の “essai” です。「試み」という意味があります。フランスの思想家モンテーニュの有名な著作物『エセー』が「エッセイ」という形式の始まりです。「試み」という意味の通り、文章構成に決まりはなく、自由に書きます。日本語では「散文」「随筆」。気持ちに任せてつらつらと書いていく文章は、エッセイです。

ただし英語の “essay” には注意してください。英語圏のエッセイは、学術的な形式で書く小論文のことです。学術的な形式とは、「序論・本論・結論」の構成が一般的。フランス語のエセーとは全く意味が違います。相手の母国語が異なる場合は、書くべき内容を確認したほうがいいでしょう。

コラムの語源は、ラテン語の“columna”です。「石の円柱」という意味ですが、転じて「縦の列」という意味を持ちます。現在のコラムの始まりは、18世紀のイギリスの新聞です。「縦長の欄」に連載した記事を「コラム」と呼んだことで定着しました。日本でも、コラムはほぼ新聞の小さなスペースに書かれている連載記事のことを指しています。

ただし、これまた事情が異なるのがアメリカです。アメリカには、フリーの「コラムニスト」という職業があり、彼らが独自の取材で作成した記事を、新聞社などが購入して掲載されたものが「コラム」と呼ばれています。

内容の違い

エッセイとコラムを最も大きく区別する要素は、書かれている内容です。

エッセイは、個人的な体験を綴っています。コラムは、多くの人が知っている事実を元に書き手の意見を加えたものです。

エッセイは、思いのままに書き綴ったものなので、基本的に他人が読むことを想定していません。そして、個人的なことが書かれています。たとえば、私は今朝歯を磨きました。そんなこと、世間のみんなは知りません。そもそも私が歯を磨いたことに、誰か興味はありますか? ほとんどの人が、私の歯磨き事情など「知らんがな」だと思います。そんなほぼ誰も興味がない「私の今朝の歯磨き」について書いたものはエッセイです。

対してコラムは多数の人が読むことを想定して書かれています。新聞のコラムに「編集者の今朝の歯磨きの様子」が美しい文章で書かれていたら(それはそれで面白いけれど)、基本的には苦情の電話が殺到するのではないでしょうか。コラムでは、読者にとっておよそ共通するテーマについて、事実に基づいた考察と意見を述べるものです。内容はあるテーマに関する客観的な論評、構成は起承転結といったクオリティが求められます。たとえば、人は歯を磨く。よって、歯磨きは共通のテーマになりえます。科学的・医学的データに基づいた歯磨きに関する筆者の意見であれば、立派なコラムです。

掲載場所の違い

エッセイは、掲載場所に決まりはありません。公開しない文章もエッセイです。手帳に手書きしている日記は、エッセイの典型。他に、雑誌やWebサイトに掲載するエッセイもあります。

コラムの掲載場所は、主に新聞です。朝日新聞の「天声人語」や読売新聞の「編集手帳」がコラムの代表。雑誌の小さなスペースに書かれているものを「コラム」と呼ぶこともあります。日本においてコラムとは、多くの人に読んでもらう場所に掲載されている小さなスペースの論評のことです。Webメディアでも記事の最後にコラムの欄を設けているものがあるかもしれません。

個人ブログに書いているものは、基本的にエッセイです。誰にも認知されていない私のブログで「コラム」というカテゴリーを作ると、少し恥ずかしいかもしれませんね。(決まりがあるわけではないので、作っても問題はありませんよ。)

つまり、エッセイは誰でも書けますが、コラムは選ばれた人しか書けないという違いがあります。

著作権の違い

著作権の扱いは、執筆者としては気をつけたいポイントです。

エッセイは、執筆者本人に著作権が帰属します。エッセイを出版などで収益化した場合は、執筆者本人に収入が発生するということです。

一方、コラムの著作権は、新聞社や出版社に帰属します。そのコラムから収益が発生しても、執筆者は原稿料以上の収入を得られません。

エッセイは自由、コラムは論評

ここまでエッセイとコラムの違いを紹介してきました。簡単に違いをまとめると、エッセイは決まりが一切なく自由な作文です。対して、コラムは論評としてのクオリティを担保する必要があります。

コラムは、事実と検証、執筆者の意見を整理して他人に発表した文章です。読者をディベートに誘導するという意図があります。ディベートを誘発する記事ですから、それなりの知見とルールに則っていることが最低限のマナーです。

エッセイは、読者に対して何かの行動を促す意図はありません。作家が書いたエッセイなどはひとつの文学ジャンルとして成立していますが、執筆者に大きな意図はなく、意図があっても隠されています。そして、読者もまた作家の意見を真剣に考えるという姿勢では読みません。自由に書かれた美しい日本語を楽しめるのがエッセイの魅力です。

「春はあけぼの」ではじまる「枕草子」も、日本人全員が知っているエッセイですが、大したことはなに一つ言っていません。ただ、その文章の旋律は、今もなお美しく、私たちの心を惹きつけます。日本語に誇りをもち、日本語の文章を読むことが大好きな日本人がたくさんいるからこそ、エッセイは、「文学ジャンル」として確立しているのではないでしょうか。