「デートに誘いたいのに、誘う前から門前払いされてしまう」「すごくいい提案だと思ったのに、お客様に首を傾げられた」「営業トーク、しているそばから、遠のく目線…」
自信がないときならともかく、丹念に準備して自信があるにもかかわらず簡単に断られてしまうと、悲しくなりますよね。自分の頑張りまで否定された気がして、落ち込んでしまうこともあるでしょう。しかし断られたのは、提案内容に魅力がなかったからではなく、「伝え方が悪かったから」というだけのことかもしれません。
戦略的に伝わる言葉を使えるようになれば、人生は変わります。そんな伝え方の極意を学べる本があるとしたら、あなたは読みますか?
ここでは、伝え方で結果が変わることを体験しながら伝わる技術を学べる『伝え方が9割』という本を紹介します。
書籍紹介
2013年2月28日に第1刷が発行されました。著者の佐々木圭一氏は、広告代理店に就職しても、すぐにコピーライターとして華々しく活躍できたわけではありませんでした。書いてはボツ、書いてはボツ…。うまいコピーを書けないストレスをプリンで解消する日々を続けます。
しかしあるとき、「伝え方にはシンプルな技術がある」「感動的なコトバは、つくることができる」ということに気づくのです。それからは、多くのヒットコピーが生まれました。「人を動かせるコピー」の作成技術をノウハウに落とし込み、分かりやすく解説したものが『伝え方が9割』です。
その内容が広告コピー以外にも使える汎用性の高い技術だったことから、100万部を超えるベストセラーとなり、第二弾やまんが版も登場しています。「うまく伝えられなくて興味をもってもらえない」という寂しさを抱える人を救う本、かもしれません。
著者紹介
佐々木圭一
コピーライター/上智大学非常勤講師
新入社員時代、もともと伝えることが得意でなかったにもかかわらず、コピーライターとして配属され苦しむ。連日、書いても書いてもすべてボツ。紙のムダということで当時つけられたあだ名は「最もエコでないコピーライター」。ストレスにより1日3個プリンを食べる日々をすごし、激太りする。それでもプリンをやめられなかったのは、世の中で唯一自分に甘かったのはプリンだったから。
あるとき、伝え方には技術があることを発見。そこから伝え方だけでなく、人生ががらりと変わる。『伝え方が9割』はその体験と、発見した技術を赤裸々に綴ったもの。シリーズが世界5ヶ国に翻訳され、中国では80万部超のベストセラーに。(そでより一部抜粋)
実践的な文章作成術を学べる本
コピーライターが伝授する交渉を有利に運ぶための文章術。いわゆるハウツー本です。「同じことを伝えるにしても、伝え方を工夫すればこんなに伝わり方が変わる!」ということを体感できます。
ハウツー本は、内容が薄かったり、概念的な説明に終始しているものが多いのですが、この本はかなり具体的に文章作成方法を解説していて、内容がぎっちり詰まっています。3時間のセミナーを受講したような満足感が得られるでしょう。お値段は、1400円+税金。お得です!
ライターや経営者はもちろん、営業職や事務職などの仕事でも使えます。そして、プライベートでも活用できるシーンが多いことに驚きました。この技術を知っているか知らないかで、人生の質に大きな差が生まれそうな気がします。
総じて、万人におすすめしたい本です。かわいいイラストや図解も多く、理解が進みやすい作りになっています。文章も独りよがりや上から目線のような読み心地を阻害する要素がなく、明快です。
前半は知っていることの再確認
前半は「ノーをイエスに変える技術」について解説されています。ただ、この前半は、それほど目新しい技術ではないかもしれません。「まあ、そうだよね」と納得しながら読んでいきました。おそらくみなさん、自然とやっているでしょう。理論的に再確認することで、これらの技術を「なんとなく」ではなく「戦略的に」使いこなせるようになります。
「ノーをイエスに変える技術」として紹介されているのは次の7つです。
- 相手の好きなこと
- 嫌いなこと回避
- 選択の自由
- 認められたい欲
- あなた限定
- チームワーク化
- 感謝
この中で、「選択の自由」は、店舗経営経験から注意が必要だと思いました。本書内では、2つの選択肢を与えてNOと言わせない作戦を提案しています。「Aに行かない?」ではなく「AとB、どちらがいい?」と聞く方法です。うん、厚かましい。これは嫌われると思います。
また、選択肢があると、決断を先送りする人が多いです。これは「ジャムの法則」として知られています。コロンビア大学経営大学院のシーナ・アイエンガー教授がスーパーマーケットでの実証実験を行って証明した法則です。「24種類のジャムを店頭に置いたときの購入率:3%に対して、6種類のジャムを置いたときは30%だった」というもの。選ぶのは意外と面倒なんですよね。
実際、店舗経営経験からも、ジャムの法則は正しいと感じています。特に、新規客集客においては、選択肢を与えない方が集客しやすかったです。商品を3つ提示したときと2提示したとき、1つしか提示しなかったときで、圧倒的に1つしか提示しなかったときが集客できていました。「買う?」or「買わない?」の二択にするということです。潔くいきましょう。もちろん、リピーターには選択肢を少し増やすと喜ばれます。
初めてデートに誘うときは「美味しいスイーツのお店教えてもらったんだけど、行かない?」、付き合いはじめてから「中華とイタリアンと和食とラーメンどれがいい?」にするのがおすすめです。
後半は実践的なノウハウ
個人的には、後半の「強い言葉をつくる5つの技術」のパートが非常に役に立ちました。
- サプライズ法:超カンタンだけれど、プロも使っている技術
- ギャップ法:オバマ氏、村上春樹氏も使う心を動かす技術
- 赤裸々法:あなたのコトバを、プロが書いたように変える技術
- リピート法:相手の記憶にすりこみ、感情をのせる技術
- クライマックス法:寝ている人も目をさます、強烈なメッセージ技術
この5つの「文章の作成ノウハウ」について、詳細に解説されています。具体例を提示しながら進むため、とても分かりやすいです。読みながら、実際に自分でも文章を作成してみると、理解が進むでしょう。すべての技術を自在に操れるようになれば、文章を書く機会がある仕事ならどんな仕事も面白くなるに違いありません。
メールの文章作成術についても触れてあります。コピーライターが書いたノウハウ本ではありますが、執筆業以外の人も使えるノウハウが満載でした。文章作成だけではなく、口頭でも役に立つ考え方です。交渉を有利に進めたい人におすすめします。